庭鳥の肖像
山雀の表情
山雀は最も人を怖がらない、或いは最も人に懐き易い野鳥という事が出来るだろう。
実際、掌から餌を食べる山雀が至る処に居る事は良く知られている。
掌に来る個体は近くに他の餌が在っても来るし、来ない個体は絶対に来ない。
その差が何なのかは知る由も無いが、単に好奇心や警戒心の差なのだろうか?
我が家では雀の餌をガレージに置いてあるのを一部の山雀が知っていて、朝ガレージの扉の前で待ってもいるし、雀に餌を遣ろうと扉を開けるとガレージに入って来るのも居るし、頭や肩に止まったりもする。
ガレージの前の陽溜まりで爪を切っていたりすると態々傍へ来て覗き込んだり、中には鋏に止まろうとする勇敢と言うのか鈍感と言うのか、そんなのも居る。
ウッカリ撮影機材の傍を離れると直ぐ興味深そうに止まり、お土産(糞)を呉れたりするので困る。
私が山雀を撮る時にブラインドに入るのは、山雀を脅かさない為では無くて糞害を避ける為である。
何しろレンズ・フードの中へ入って来たのが居たが、あの丈夫そうな嘴でレンズをコンコンされたら堪らない。

表情を観る限りこの個体は頭が良さそうだし、結構好奇心も強そうなので何かと気を付けなければ大事な撮影機材に悪戯されそうだ。



上3枚は同じ個体で、下の2枚は水浴び後の乾き切っていないところ。
この個体は何時も身綺麗だし、目元もスッキリして いて汚れているのを見た事がない。
山雀に関しては結構個体識別が出来ているので、観察していると見掛けも態度も上品そうなのや、粗野なのや剽軽なの等色々なのが居るものだ。

子育て期以外は何方かと言えば草食系の餌の方が多そうに見える。
それに意外にもこの個体みたいに結構花粉塗れになっているし、樹液も良く吸っているのを見掛ける。




山雀は時々後頭部の羽毛を冠羽みたいに逆立てる事がある。
どういう時にそうするのかは知らないが、個体に依ってはよく逆立てているが、何かのアピールだろうか?




野鳥を飼い始めた頃、表情や個性なんて全く気に留めた事は無かった。
こうやって肖像写真を撮り出して初めて、表情にも個性があるのだなと気付いた次第である。
繁殖期以外他の個体と交わらない種類は表情の変化に乏しいが、そういうのも繁殖期には案外表情が豊かなのかも?
群れで暮らす種類が表情豊かに感じられるのは、感情の現れが詰まりは表情になっているからだろう。
逆に言えば、単独行動する種類は、普段は感情が顕になる事が殆ど無いのだろう。



普段見ている限りでは枝に止まって大人 しくしている事もある。
それが目の前130cmだと仲々そうはゆかず常に動き回り、ファインダー内に捉え続ける事自体がかなり難しい。
したがって所謂歩留りは酷いもので、撮影の度に削除する枚数の余りの多さに辟易しているが、それ等は全てピントの良い写真を撮る為の下準備だと割り切る事にしている。

どの鳥でもそうだが山雀も勿論、正面顔は被写界深度の関係で画にならない。
最小絞りでも被写界深度はしれたものなので、離れて撮ってトリミングしか手は無い。

ブラインドの窓から覗き込み「ネー、遊ぼうよ。」と言っている様に思えた。
何となく微笑んでいる様に見えたのは思い過ごしだろうか?

偶然 見付けた個体だが仲々カメラの前に来ず、やっと撮れた1枚。
右目の後の腫れは怪我か腫瘍なのかは判らないが、兎に角正常では無い。
何かと異常のある個体にはよく出会すが、結局何もしては遣れ無い。
この個体もその後見掛ける事は無かった。

彼の目は完全に潰れてしまっていた。
果たして片方の目だけで距離が測れるのだろうか、木々の枝の間を上手く擦り抜けて翔べるのだろうかと次々に疑問が湧いてくる。
彼もこの時見掛けた切りだ。

1年の内に何羽かはこうした姿を見なければならない。
彼は何かに激突して絶命したのだろう、見たくないものを見てしまった。